「緒言」アトピー性皮膚炎では真皮内のマスト細胞数が増加するとともに、神経線維と近傍に存在するマスト細胞の数も増加する。神経とマスト細胞の両者に発現するIgCAM型接着分子CADM1はそのホモフィリックな結合により神経-マスト細胞相互作用を促進する。今回ハプテン誘導型アトピー性皮膚炎マウスモデルの病変部に出現するマスト細胞におけるCADM1の発現を正常皮膚と比較して調べた。 「方法・結果」(1)アトピー性皮膚炎モデルはハプテン(トリニトロクロロベンゼン)で感作したBalb/cマウスの耳介にハプテンを1ヶ月間隔日塗布することにより作出した。(2)本病変の病理組織学的な所見は炎症細胞浸潤を伴う真皮の線維化と表皮肥厚であり、アルシアンブルー染色により線維化巣内に多数のマスト細胞が出現していることを確認した。(3)抗CADM1抗体による免疫染色の後にアルシアンブルー染色を行った。マスト細胞周囲に発達した神経線維にCADM1シグナルが広く一様に検出された。マスト細胞では形態的に脱顆粒状態にあるものにおいてのみその細胞膜上にCADM1シグナルが検出された。(4)正常対照耳介ではCADM1陽性マスト細胞は認められなかった。(5)病変皮膚及び正常皮膚をトルイジンブルー染色し、異染色性によりマスト細胞を識別して、レーザーマイクロダイセクション法によりマスト細胞だけを選択的に採取した。全RNAを抽出後、RT-PCRによってCADM1の発現を検定したところ、病変内マスト細胞におけるCADM1の発現上昇が検出された。 「考察」マウスアトピー性皮膚炎モデルで出現するマスト細胞においては一過性にCADM1の発現が増強するので、その結果神経-マスト細胞相互作用が増強し、マスト細胞の脱顆粒が誘発される可能性が示唆された。
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