研究課題
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)や原発性胆汁性肝硬変(PBC)はいずれも難治性肝疾患であり、発症機序の解明や根本的治療法の開発が希求されている。我々は独自に開発した両疾患モデル動物の病態解析を通じ、従来全く異なる疾患として捉えられてきた両疾患の病理学的共通性を検討している。平成21年度には、NASHモデルマウス(MSGマウス:メス)を用い、胆管周囲の炎症や、抗核抗体の出現などPBCに類似する病変が出現する事を確認した。平成22年度は以下の成果を得た。1.PBCモデル動物(20A免疫マウス、dnTGF β R II KOマウス)におけるNASH様病変発症の検討Gershwin教授を中心とする国際研究グループ(カリフォルニア大、帝京大、九州大、中国科学技術大、台湾大)で解析されている、異なる機序に起因する複数のPBCモデルマウス肝の病理組織像を経時的に解析し、4~48週齢のいずれのマウスにおいても、NASH様病変が認められない事を確認した。2.自己免疫機序を合併するヒトNASH症例の臨床病理学的解析北陸地域でこれまで20例の症例を収集し、通常のNASHに比して肝臓の炎症細胞浸潤がより高度である事を確認した。ヒトにおいても、PBC患者の経過中に新たにNASHを発症することは少ない。一方、NASH患者に抗核抗体や抗ミトコンドリア抗体が出現することは稀ではなく(自験例で30%程度)、その多くは閉経期以降の肥満女性であった。動物実験の結果と併せ、NASH発症のetiology(肥満、DM、高脂血症など)と女性ホルモンの減少状態が、PBC様病変の出現に関与している可能性が示唆された。これまでの研究成果を国際学会(中国)で発表し、今後、北京大学人民医院消化器内科(中国)と共同で同様の症例を収集し、日中間で臨床病理学的比較検討を進めることとなった。
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