本年度はCD109遺伝子ノックアウトマウスの樹立と表現型の解析を行った。ヘテロノックアウトマウス同士の交配によりホモノックアウトマウスが得られたことより、CD109ノックアウトマウスは生存可能であることが判明した。ホモノックアウトマウスの表現系として、生後3週頃に脱毛が認められたが、その他は、肉眼的に確認できる表現型に乏しかった。脱毛の表現型を説明するために、免疫組織化学染色を用いて皮膚組織におけるCD109の発現を解析したところ、表皮有棘細胞層に発現が認められ、毛包部にも発現している可能性が示唆された。現在in situ hybridizationによりRNAレベルでの発現の確認を行っている。また脱毛が起きる時間的経過を組織学的に解析するために、ホモノックアウトマウスの皮膚の切片を経時的に作成し、観察する予定である。さらに、CD109は精巣において高発現していることがノーザンブロットにより確認されているので、ホモノックアウトマウスの生殖能や精巣の組織学的な検討を行った。雌雄のCD109ホモノックアウトマウスを交配させたときに子供が生まれてきたため、CD109をノックアウトしても生殖能力は保たれることが明らかとなった。精巣を組織学的に解析したところ、精子は形成されているが、精子の成熟段階でホモノックアウトマウスの方がWild typeマウスより細胞数が減少していることが判明した。現在、免疫組織科学的検討により、精子形成過程を詳細に検討中である。
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