《マウスの遺伝的背景がRetD707N変異マウスの表現型に及ぼす影響の解析》 遺伝子改変マウスを用いた実験では、マウスの遺伝背景が異なると表現型が異なるケースがある。今回の研究に用いているRetD707Nノックインマウスは、129Sv/Ev系のマウスに由来するES細胞株から樹立されたキメラマウスをC57BI/6系のマウスと交配させて作製したものであり、得られたマウス間での交配によるクローズドコロニーを用いて一連の実験を行って来た。従って、実験に用いたマウスの遺伝的背景は129Sv/EvとC57BI/6の2つが混在した系となる。RetD707Nノックインマウスの系統を維持する過程で、C57BL16系とのバッククロスの交配を11世代繰り返し、遺伝的背景をC57BU6系となったコロニーが得られているので、その表現型を解析し、マウスの遺伝的背景による影響について調べた。今まで解析に用いた129Sv/EvとC57BL/6の2つが遺伝的背景に混在した系では、Retによるアポトーシス活性が喪失するD707N変異ノックンマウスに腸管神経の過形成と腸管神経の肛門側における欠損が生じた。一方、C57BL/6が遺伝的背景の系では、腸管神経の過形成は同様に観察されたが、腸管神経の肛門側における欠損は生じなかった。腸管神経の欠損は、GDNF/Retのシグナルの不足によって生じるケースが知られており、マウスの遺伝的背景の違いによって、GDNF/Retのシグナルの強さが変化した可能性が考えられた。
|