研究課題
遺伝子KO細胞を中心として、Drs/GADD34によるストレス環境下での細胞生存制御機構を解析し以下の成果を得た。1.DrsKO MEF細胞がグルコース飢餓条件下においてアポトーシスを誘導することを見出した。このアポトーシスはmTOR阻害剤ラパマイシンによって阻害された。またDrsKO細胞ではグルコース枯渇時にmTOR下流のS6蛋白のリン酸化の抑制が認められなかったことから、DrsはmTOR経路男抑制を介してエネルギー枯渇時の細胞生存に関わっていると考えられる。さらに、Drsがストレス応答蛋白GADD34との結合を介してTSC1/2と複合体を形成することを見い出した。DrsとGADD34との結合には両蛋白の機能ドメインであるスシモチーフ(Drs)とPP1結合ドメイン(GADD34)が重要であった。2.低酸素培養条件下でも同様の実験を行い、Drsは低酸素下での細胞生存にもmTOR経路の抑制を介して重要な果たしていることを明らかにした。3.DrsKO細胞ではWT細胞に比べて解糖系の働きが亢進し、グルコース消費量、乳酸産生量が増加していることを新たに見出した。4.GADD34がmTOR経路を介してウイルス増殖の抑制に関与していることを明らかにしてきたが、さらに我々はDrsKO細胞においてもWT細胞に比べてVSV,HSVなどのウイルス増殖が亢進することから、Drsも癌だけでなくウイルス増殖の制御にも関与していることを見出した。これらの結果から、Drsはエネルギー枯渇、低酸素、ウイルス感染など様々なストレスに対する細胞応答に重要な役割をはたしていること、またDrsはストレス応答蛋白GADD34を介してmTOR経路の制御にも関与していることが明らかになってきた。
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