平成21年度には、ヒトの血液、血漿あるいは血小板を用いたin vitroの実験を行った。 まず、細胞のタンパク質合成装置リボソームの構成分子であるS19リボソームタンパク質(RP S19)が、 正常の血漿中に存在することを、免疫化学的手法(ウエスタンブロット法)で明らかにした。これは、リボソームの成分が血漿中に存在することを示した最初の研究成果である。 次に、この血漿RP S19は、血液凝固の過程でトロンビンの作用で活性型になった凝固XIII(XIIIa因子、因子血漿トランスグルタミナーゼ)の作用を受けて架橋二量体化並びに多量体化されて単球走化活性を獲得することを、ウエスタンブロット法並びにケモタキシスチャンバー測定法を用いて示した。これは、血管内で生じた血栓が1~2日のうちに単球/マクロファージによって被覆されるという人体病理学所見の分子機序研究の基盤となる成果である。これにより、平成22年度に予定しているモルモットの腹腔を用いた凝血塊吸収に関する実験的研究のめどが立った。 さらに、RP S19がXIIIa因子により架橋化される反応が、同じく凝固の過程でトロンビンにより活性化された血小板の細胞膜外層に表出したフォスファチジルセリン分子を足場として進むことを明らかにした。この結果から、アポトーシスの過程で、細胞内でRP S19が細胞トランスグルタミナーゼの作用で二量体化(多量体化)させる際にも、細胞膜の内層に存在するフォスファチジルセリン分子状で反応が進んでいることが推察できた。次の研究テーマの創出につながる成果である。
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