研究概要 |
1)関節炎初期病変の時間的空間的な絞り込み: 関節炎初期に変動する遺伝子を探索するために、gp130F759(5ヶ月齢♀)の関節(n=3,score 0~1)の総RNAよりcDNAを合成し、C57BL/6を対照としてマイクロアレイ解析を行った。34,383個の遺伝子解析の結果、2倍以上に発現増加する遺伝子2,425個、発現減少する遺伝子3,027個を得た。その中で4倍以上に発現増加或は減少した遺伝子はそれぞれ334個、278個であった。発現増加を示したものとして、骨髄系細胞、B細胞、T細胞などの細胞系譜特異的遺伝子やマトリックスメタロプロテアーゼの遺伝子を認めた。定量的な発現遺伝子解析により、一部の5ヶ月齢gp130F759の関節においてIL-6,IL-17,MMP-8,MMP-9の遺伝子発現増加を認めた。コラゲナーゼ処理にて調製した滑膜細胞のフローサイトメーター解析で骨髄系細胞(好中球,マクロファージ,好酸球)とB細胞の増加は認められたもののT細胞はほとんど検出されなかった。同時期のリンパ組織における細胞構成の変化はほとんど認められなかったことから、5ヶ月齢のgp130F759の関節組織においてすでに炎症に関与し得る細胞が局在することを見出した。 2)5ヶ月齢のgp130F759において関節リウマチと類似した病態が存在する。 興味深いことに、同時期に関節リウマチの疾患関連遺伝子であるPadi4遺伝子が関節組織で発現増加し、血清中に抗CCP抗体が検出された。さらに関節組織を可溶化して得たタンパク質のウエスタンブロット解析により、Padi4タンパク質の増加とSTAT3のチロシンリン酸化の増強を認めた。 以上の解析結果により、5ヶ月齢のgp130F759において関節炎初期病変が発生することを明らかにし、関節局所における初期病態との関連で注目すべき細胞と遺伝子を特定し得た。
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