平成21年度では、前立腺癌の抗アンドロゲン療法後に出現するマクロファージの機能と治療抵抗性に関わる役割について、培養細胞を用いたin vitro系およびヌードマウスへの移植系を用いたin vivo系にて解析を行った。 培養細胞を用いた実験では、アンドロゲン依存性前立腺癌細胞株LNCapについて、マクロファージ由来サイトカインによるアンドロゲン欠乏状態での増殖能に与える影響を検討した。その結果、IL-1betaについては、アンドロゲンの存在、非存在下のいずれにおいても、腫瘍の増殖を抑制した。この際、ウエスタンブロット法による解析でアンドロゲン受容体(AR)の発現が減少していることが確認され、AR転写活性能の低下が腫瘍細胞の増殖抑制に関与している可能性が考えられた。一方、IL-1betaと同様にNF-kBを活性化するRANKLについては、細胞増殖抑制ならびにAR発現減少のいずれも観察されず、IL-1betaシグナルとRANK/RANKLシグナルはNF-kB以外の経路において異なるシグナルを伝えている可能性が示唆された。また、ARに特異的なshRNAを構築し、AR発現自体の減少がLNCap細胞の増殖に与える影響を検討した。shRNAによりARをノックダウンした細胞では、コントロールに比して細胞の増殖が顕著に抑制された。 ヌードマウスへの移植系では、除睾による影響を検討した。除睾マウスにはLNCap細胞は単独で生着できないが、腹腔内マクロファージを共移植した系では、25%(1/4)と頻度は低いながら腫瘍細胞の生着が見られた。しかしながら、腫瘍の増殖能はコントロール群に比して有意に低かった。in vivoにおいて腫瘍の生着のみならず、その増殖にアンドロゲンを介したAR活性化が関与していることが示唆された。
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