研究概要 |
正常子宮頸部上皮細胞を用い、腫瘍原性獲得に必要な最小限の遺伝子(E6、E7、HrasV12,c-mycの4遺伝子導入)を同定し、わずか10細胞のヌードマウス皮下移植で造腫瘍性を示す人工ヒト子宮頸がん幹細胞株を樹立した。そこで、がん幹細胞の成立機序とその維持機構をin vitroで詳細に解析し明らかにする。まずE6E7遺伝子の重要性を解析した。E6E7遺伝子の導入なしにHrasV12あるいはc-myc遺伝子の導入を行うと、細胞死が誘導され、細胞株樹立が困難であることを確認している。そこで人工ヒト子宮頸がん幹細胞株樹立後のHPV E6およびE7のがん幹細胞性維持への貢献度を解析するためshRNAを導入しその腫瘍原生が優位に低下することを確認した。またtet-offシステムを用いDOX添加によりE6E7遺伝子の発現が抑制される細胞を樹立した。ヌードマウスの皮下における腫瘍形成後に遺伝子発現を抑制してもその腫瘍増殖が抑制されることから、HPVがん遺伝子E6、E7を標的とした治療法が末期の子宮頸がんにも有効であること示唆された。また、さらに解析を進め、E6、E7、HrasV12の3遺伝子導入で十分ながん幹細胞性が付与されることが判明した。Hrasの下流で制御されるmycががん幹細胞性の成立・維持に非常に重要であることが示唆され、この制御機構及びmycの下流でがん幹細胞性の維持に寄与する因子について解析を進めている。
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