研究概要 |
本年度は胃がんと口腔扁平上皮がんのHER familを標的とする分子標的治療について検索し、以下の2点を明らかにした。 1HER2過剰発現胃癌細胞株を用いてTrastuzumabとLapatinib(EGFR,HER2のdual TKI)の抗腫瘍効果とその分子機構を比較検討した。その結果、Lapatinibの抗腫瘍効果はPI3K/AktおよびMAPKの両signal経路のブロックによる細胞周期のG1期停止とアポトーシス誘導のためと考えられた。一方、Trastuzumabの下流シグナルブロックによる細胞周期の停止およびアポトーシス誘導はLapatinibに比べて弱く、抗腫瘍効果は主として抗体依存性細胞障害(ADCC)によることが明らかとなった。LapatinibとTrastuzumabはHER2過剰発現胃癌に対して異なるメカニズムで作用すると考えられ、LapatinibはTrastuzumb耐性を獲得したHER2過乗ll発現胃癌に対して新しい治療法となる可能性が示唆され。 2舌癌由来の角化型SCC細胞株(HSC-2)および低分化型細胞株(HSC-3)を用いてGefitinib感受性を比較険討し、その機構について解析した。HSC-2はEGFRを高発現し、E-cadherin(+)/Vimentin(-)であった。一方、HSC-3のEGFR発現は比較的低く、E-cadherin(+)/Vimentin(+)でin vitroで短紡錘型の形態を有し、in vivoで角化型と肉腫型が混在、移行が認められるなどEMT(Epithelial mesenchymal transtion)様形質を示し、増殖能はHSC-2に比べ有意に高かった。両細胞のGefitinib感受性を検討したところ、IC50はHSC-2が1.0μMに対し、HSC-3は>10μMと有意に抵抗性が高かった。ヌードマウス皮下移植重瘍ではHSC-2はGefitinibにより著名な腫瘍縮小を示したのに対し、HSC-3では分化した成分の腫瘍縮小は認められたが、肉腫様成分では腫瘍縮小は軽度であった。頭頸部扁平上皮癌の大部分はEGFRを高発現しており、EGFRは有用な感受性予測マーカーとはならない。今回の結果からVimentinなどのEMTマーカーがGefitinib耐性の指標になりうる可能性が示唆された。
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