研究課題
加齢とともに神経変性を発症するSAMP10マウスの3ヵ月齢個体に40mg/kgのカイニン酸(KA)を腹腔投与し、海馬に興奮毒性損傷を誘導した。KA投与3日後の海馬におけるサイトカイン遺伝子発現をDNAマイクロアレイおよび定量的リアルタイムRT-PCRを用いて網羅的に検討した。比較対照として、神経変性を発症しないSAMR1マウスの3ヵ月齢および15ヵ月齢個体を用いた。その結果、3ヵ月齢および15ヵ月齢のSAMR1マウスの海馬ではKA処理によって、Spp1(osteopontin),Cxcl10,Cc13(MIP-1α),Cc14(MIP-1β),Socs3(suppressor of cytokine signalling),Osmr(oncostatin M receptor),Cxcl6の遺伝子発現が4倍から20倍程度に亢進した。Osteopontinやoncostatinは組織の保護・修復に関与することが知られており、この実験条件の海馬組織は神経保護的なサイトカインプロフィールを示すことがわかった。これに対し、3ヵ月齢SAMP10マウスの海馬ではKA処理によって、これらのサイトカイン遺伝子発現は上昇しなかった。また、KA投与3日後にマウスの脳切片を作製し、HE染色および免疫組織化学的染色を行って、各細胞成分の形態変化を調べた。その結果、ニューロンの損傷はいずれのマウスにおいても同程度に認められた。アストロサイトはいずれのマウスにおいても反応性に肥大した。ミクログリアの反応として、細胞体が伸長・肥大した特徴的形態を有する活性化ミクログリアが多数出現した。この活性化ミクログリアの肥大パターンは、SAMP10とSAMR1とでは大きく違っており、SAMP10の活性化ミクログリアは細胞体が小さく、また突起も少なかった。
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