研究課題
加齢性神経変性モデルSAMP10マウスでは、ミクログリアの神経保護機能に異常があるのではないかと考え、カイニン酸による海馬損傷後のグリア応答を、定量的RT-PCRに加えて免疫組織化学的に解析した。正常マウスでは海馬損傷後、活性化ミクログリアがインターフェロンγを、アストロサイトがその受容体を発現した。この刺激によりアストロサイトはSOCS3、 CXCL10、 MIP-1αを発現した。ミクログリアはまたGM-CSFやオステオポンチンを発現し、ニューロンがオステオポンチン受容体CD44を発現した。このことは、損傷後の海馬がニューロン・グリア間相互作用を構築し、神経保護作用をもつオステオポンチン/CD44の系を介して、組織を修復へと誘導することを示す。一方、SAMP10マウスでは、海馬損傷後にミクログリアの活性化とサイトカイン発現が不十分であり、グリア・ニューロン間相互作用に基づく組織修復機構が構築されなかった。SAMP10が有するこうした特徴が、加齢性神経変性を起こりやすくしていると考える。次に、ミクログリアの機能が神経変性の原因にどの程度寄与するのかを明らかにする目的で、ミクログリアが脳細胞の中で唯一骨髄由来であることを利用し、骨髄内骨髄移植によってミクログリアを置換する実験を試みた。パイロットスタディとして、5週齢のGFP遺伝子導入B6マウス(ドナー)の骨髄を8週齢の通常B6(レシピエント)に移植し、2週、1ヵ月、4ヵ月、8ヵ月後にドナー由来骨髄細胞がレシピエントの脳実質内に進入するか、また、どの細胞に分化するかを検討した。その結果、早い個体では1ヵ月後から、遅い個体でも4ヵ月から8ヵ月にかけて徐々に脳実質内に進入するドナー由来細胞が増加した。進入可能な脳領域は嗅球・中隔・手綱・視床下部・扁桃体・海馬・脳幹網様体・小脳に限定され、すべてミクログリアに分化した。
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