研究課題
本研究ではVEGFシグナル阻害による転移・浸潤形質の誘導の分子メカニズムを明らかにすることを目的として、血管新生阻害がもたらす低酸素の役割に注目してきた。hypoxia inducible factor(HIF)は低酸素応答を司る転写因子であり、血管新生阻害による浸潤形質の誘導に重要な役割を果たしている可能性がある。昨年度までにHIF-1α膵島特異的ノックアウトマウスとVEGFノックアウトRIP-Tag2マウスとの交配を行うことにより、HIF-1の機能を検討した。VEGF単独ノックアウトマウス(VKO)で見られた腫瘍の浸潤形質が重複ノックアウトマウス(DKO)では著しく低下していることが明らかになった。そこで、浸潤形質に関与したHIF-1α下流遺伝子の同定を試みた。VKO腫瘍ではE-cadherinの発現が低下していたので、DKOでE-cadherinの発現の変化を検討したところ、E-cadherinの発現は野生型腫瘍と同等であった。樹立した細胞株や最近我々が開発した方法による初代培養細胞では短期間の低酸素暴露では接着因子の発現変化は観察されなかった。低酸素によるHIFの活性化が浸潤形質を伴う低酸素耐性クローンの選択に関与した可能性がある。昨年度はHIF単独ノックアウトマウス(HKO)の増殖や浸潤に関する解析を行った。VEGFやHIFのノックアウトはCre/loxシステムを利用しているが、Cre発現マウスのみ、との交配で、RIP-Tag2マウスの腫瘍形成が促進されることが判明した。しかし、HKOの表現型はRIP-Tag2・Cre発現マウスと同じであったので、VEGF存在下の腫瘍形成にHIFは重要ではないことが明らかになった。以上の結果を総合して論文投稿し、現在revise中である。
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J Biol Chem
巻: 286(14) ページ: 12524-32
DOI:10.1074/jbc.m110.194738.
Proc Natl Acad Sci USA
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