研究課題
前年度に確立した、UPLC-ESI-qMS/MSによる植物ホルモンの高感度・大量解析法の原虫サンプルへの応用法を用いて、本年度は供試原虫としてネズミマラリア原虫、トキソプラズマ、そして両種と近縁で主に家畜に感染する寄生原虫であるアイメリアを用い、植物ホルモン経路の種・寄生環境による違いを探索した。3種類の原虫において、それぞれ特徴的な植物ホルモン分布が認められた。トキソプラズマが、サイトカイニンおよびアブシジン酸を持つことは既に判明している(Nagamune,Nature 2008,Andrabi,投稿中)。マラリア原虫とアイメリアは、これら2種のホルモンに加えてオーキシン、サリチル酸、ジャスモン酸を有することが判明した。サイトカイニン類は細胞分裂を促す植物ホルモンである。高等植物の活性型サイトカイニンには4種(isopentenyladenine(iP),traps-zeatin(tZ),dihydrozeatin(DZ),cis-zeatin(cZ))が存在することが知られている。解析の結果、トキソプラズマおよびアイメリアからはこのうち2種(iP,tZ)が検出された。一方,マラリア原虫においてはtZの検出量が非常に少なく、活性型サイトカイニンはほとんどがip型であった。更にマラリア原虫では、iPの前駆物質であるiPリボースリン酸(iPRPs)が高濃度に蓄積していた。サリチル酸は病害ストレス応答に関与するホルモンである。マラリア原虫およびアイメリア検体から、サリチル酸が極めて高い濃度で検出された。他のホルモン類の原虫内濃度が0.1~100nM程度であるのに対し、サリチル酸の濃度は5,000nMから10,000nMに達していた。
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