研究概要 |
我々は、これまでにマンソン裂頭条虫のプレロセルコイド(幼虫)の分泌物質中の免疫抑制因子(ES90)を精製し、この因子がlipopolysaccharide (LPS)活性化マクロファージの遺伝子発現および破骨細胞形成を抑制することを見い出した。そして、ES90のN末端と内部のアミノ酸配列の一部を決定した。そして、このアミノ酸配列を基にしたdegenerate PCRプライマーを作成し、幼虫由来のmRNAからRT-PCR法によってcDNA断片が得られた。このcDNAの塩基配列を基にして、3'RACE法および5'RACE法を用いて全長のcDNAの塩基配列を決定し、無細胞のコムギ胚芽系で遺伝子組換えタンパク質を作成したが、LPSで刺激した活性化RAW264.7マクロファージのnitrite(NO)産生の抑制作用は認められなかった。 一方、旋毛虫感染マウスでは、腹腔マクロファー数が増加し、これらのマクロファージの遺伝子発現をRT-PcR法で検討したところ、TNF-α,IL-1β,誘導型のNo合成酵素(iNos)の遺伝子発現は認められず、classical activationは起きていなかったが、FIZZ,Ym1,arginaseなどの遺伝子発現が認められ、alternative activationが起きていると考えられた。腹腔に旋毛虫の新生幼虫を注射で投与しても、旋毛虫筋肉内幼虫の経口感染と同様に腹腔マクロファージの増加とalternative activationが観察され、Th2優位な免疫応答との関連が推察された。
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