リーシュマニア症は発展途上国の貧しい人々が罹患する風土病であり、21世紀のNeglected Diseasesとも呼ばれる。研究代表者が着目するのは、リーシュマニア原虫に感染しながらも発症に至らない多数の住民の存在である。内蔵型リーシュマニア症(カラ・アザール)の発症の有無にはヒトの遺伝形質に加えて、栄養不良状態・腸管内蠕虫感染・家屋や寝床の形態などの体内環境因子が大きく影響していることが示唆されている。本研究の目的は上記体内環境因子のリーシュマニア症の発症に及ぼす影響を科学的に評価し、そのメカニズムを解明することにある。 本年我々は、腸管寄生線虫Heligmosomoides polygylus感染マウスの経口感染モデルを確立し、一定期間後にLeishmania majorを感染させ、その病態・臓器内原虫数・免疫応答の変化を経時的に測定した。その結果、H.polygylusの腸管寄生はL.majorによって引き起こされる皮膚型リーシュマニア症の病態には影響しないことが示唆された。カラ・アザールを引き起こすL.donovaniに関しては、マウスにおける病原性が低いため、放射線照射によって免疫不全状態にしたマウスやスナネズミで継代することによって、病原性の高い原虫を得ようと努力しているところである。Vitamin A、Zinc、Iron欠乏食などは既に入手済みで、これら飼育試料を使ってマウスの飼育を始めたところである。
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