研究概要 |
水系感染症であるクリプトスポリジウム症はクリプトスポリジウム属のオーシストの経口摂取で起こり主な症状は激しい下痢と腹痛及び吐き気である。健康人では自然治癒するが免疫機能が低下する臓器移植やエイズ患者では脱水症状で死亡する例も多い。現在、免疫不全症患者のクリプトスポリジウム症にはニタゾキサニドが使われているがその効果は不十分といわれている。申請者は長年のアフリカトリパノソーマ研究の中でTrypanosoma b. brucei宿主感染型である血流型原虫のミトコンドリアに特異的に存在するシアン耐性末端呼吸酵素(alternative oxidase, AOX)に対しnMレベルでしかも原虫特異的に作用する新規抗生物質アスコフラノンを発見し本剤を用い新規抗トリパノソーマ薬の開発を進めている。また、アスコフラノンの標的分子であるAOXがクリプトスポリジウムにも存在することが明らかになり大腸菌を用いた組み替え酵素はアスコフラノンにより強力に阻害されることからクリプトスポリジウム治療薬としても期待されている。本研究ではクリプトスポリジウム感染SCIDマウスにアスコフラノン(100mg/kg)を経口、腹腔内、静脈投与を行い排出オーシスト量からその治療効果を検討した。6日間連続経口投与マウスの排出オーシストは2x10^5/gから減少を示し投与終了時には8x10^4/gであったが投与を止めると再び増加を示し投与中止後10日目には4x10^5/gまで増加した。この結果は腹腔内および静脈投与においても同じような傾向を示した。
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