寄生虫感染防御におけるマスト細胞と好塩基球について解析した。マスト細胞は血管周囲に分布し、サイトカインと化学伝達物質を放出する。我々はマラリア原虫の防御にマスト細胞の関与をすでに報告した。本研究ではマラリア患者の血中VEGFの増加を見出した。VEGFはマスト細胞から分泌されることが知られている。そこでネズミマラリアにおけるマスト細胞由来VEGFの関与を検討した。マラリア原虫感染マウスの血中VEGF値は感染の経過に伴って増加する。このVEGF値の増加はマスト細胞欠損マウスではみられないが、培養マスト細胞の移入でみられるようになる。また正常マウスの防御能はVEGFの移入で濃度依存的に増強し、VEGFの阻害で減弱する。すなわち、マスト細胞由来VEGFによるマラリア原虫の感染防御が示唆される。我々が先に報告したマスト細胞由来TNFによる防御とここで示したVEGFの関係では、感染後の血中VEGF値がTNF欠損マウスでは対照マウスより低いことから、TNFがVEGFの上流にあることがわかる。次にVEGF受容体についてみると、マクロファージにおもに発現するVEGFR-1よりも血管内皮細胞に多く発現するVEGFR-2を介する防御が示された。 フタトゲチマダニのマウスでの二次感染防御にはマスト細胞と好塩基球さらにIgEが関与する。二次感染防御の発現では好塩基球上のIgE受容体は必要だがマスト細胞上のそれは必要としない。ダニの感染局所における好塩基球の集積について蛍光標識した好塩基球を用いた生体内映像による動態観察を行った。 感染局所の好塩基球はマスト細胞の存在下ではその場に集積してとどまるが、マスト細胞がないととどまることがない。この知見から好塩基球とマスト細胞は異なる機序で局所に集積し、協調して防御発現にあたっていることが判明した。
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