Stenotrophomonas maltophiliaと同様に環境菌である緑膿菌において排出ポンプは薬剤耐性化に大きな役割を果たしていると言われている。そこでMLST解析に用いた12株を含む20株を用いて、S. maltophiliaの主要な排出ポンプであるsmeDEF遺伝子と、病原性など様々な遺伝子の発現に関与していることが示唆されているDSF遺伝子および主要プロテアーゼであるStmPr1をコードする遺伝子の転写量を測定した。 3つの遺伝子ともに標準株と比べて大きく変わる株はなく、臨床分離の多剤耐性菌であるにもかかわらず特徴的な発現は示していなかった。この結果は昨年までに行った病原性因子の発現状況と同様に、病原因子あるいは薬剤耐性関連遺伝子があったり、その発現量が多かったりする故にこの菌が臨床に存在しているというのではないということである。むしろこれまでに行ったMLSTやPFGEなどの疫学の結果に見られるように、これらS. maltophiliaは外部から外来患者等によって持ち込まれたもので、それが患者からの検体から分離されたと考えられる。病院環境におけるアドバンテージを持つ故に院内で拡がったのではなく外部から持ち込まれそのまま存在していたというわけである。 しかしながら多くの薬剤に対する耐性遺伝子の蓄積はみられるものの、目立った病原性遺伝子の発現もないこの菌が少なからず臨床で問題を起こすには原因があるはずで、今後新たな病原因子の検出や調べられていない遺伝子伝達系についてより広範囲から株を得て調査研究を行う必要があると考える。
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