結核菌初感染防御におけるPD-1経路の重要性 結核菌に対する感染防御におけるPD-1シグナル伝達経路の役割を調べるため、正常マウスとPD-1欠損マウスに結核菌を点鼻感染させた。正常マウスの肺では、経時的に感染3週目まで菌数が増加したが、それ以降の菌の増殖は発現した獲得抵抗性により抑えられた。しかし、PD-1欠損マウスの肺では感染3週目以降でも菌の増殖を制御できなかった。感染3週目以降のPD-1欠損マウスの肺ではケモカインや炎症性サイトカインの強い産生と、それに伴う好中球やマクロファージの著明な浸潤、および広範な組織傷害が認められたことから、結核菌感染に対して過剰な炎症反応が誘導されていることが示された。さらに、結核菌を感染したPD-1欠損マウス由来CD4^+T細胞は、抗原刺激に対して強いIFN-γ産生を示した。以上の結果から、PD-1経路を介した抑制性シグナルがないと、結核菌に対する宿主応答が過剰に誘導されてしまい、炎症性細胞の浸潤を伴う組織傷害が引き起こされることが示された。 結核菌因子PPE37の宿主防御免疫発現制御への関与 PPE37はin vivoおよびin vitro感染後にその発現が高まることがわかっており、菌の病原性との関係が示唆されている。そこで、PPE37の機能を明らかにするため、PPE37を発現するM.smegmatis(Ms_ppe37)を作製し、in vitroでマクロファージに感染させ、各種サイトカイン産生応答を解析した。その結果、親株M.smegmatis感染マクロファージに比べて、Ms_ppe37感染マクロファージのTNF-α、IL-6、IL-12p40およびIL-1β産生は、明らかに低いことが示された。さらに、Ms_ppe37感染ではNF-κBおよびMAPKsの活性化レベルが低いことが明らかとなった。以上の結果から、PPE37は感染後に誘導される炎症性サイトカイン産生のシグナル伝達系を抑制することで、それらの産生を抑える活性があることが示された。
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