病原性レプトスピラ(Leptospira interrogans)は、自然免疫機構を回避し、いろいろな臓器に移行するが、これらの機構は未だに解明されていない。本研究では、病原性レプトスピラの自然免疫回避機構を明らかにすることを目的とし、マクロファージへの感染機構に注目した。 病原性レプトスピラはマクロファージに貪食されるが、約20%の菌は酸性化しない小胞内で生存できることが明らかになった。また、マクロファージ感染24時間後のマクロファージ内のレプトスピラを透過型電子顕微鏡で観察した結果、レプトスピラは小胞内に存在し、菌体がスピロヘータの形状を保持していた。一方、感染4時間を経過すると細胞外に遊離するスピロヘータも観察された。この細胞外への遊離機構を明らかにするために、FITC-標識レプトスピラでマクロファージを感染し、ライブイメージングの解析を行った。その結果、感染4時間後から約5%のマクロファージは細胞死を起こすことがわかった。この細胞死の様式を調べた結果、アポトーシスであるこがわかった。また、ファゴソームの成熟過程を塩化アンモニウムで阻害することによって、レプトスピラによるアポトーシス誘導が増加した。このアポトーシス誘導には、細菌のパターン認識を行う細胞側レセプターのTLR4、およびアダプター分子であるTrifが必須であり、カスパーゼ-3とカスパーゼ-9の活性化が認められた。また、熱で処理した菌でも生菌と同様アポトーシス誘導が認められ、アポトーシス誘導には熱耐性である菌の分画が関与していることが示唆された。以上の結果から、病原性レプトスピラはマクロファージに貪食後、殺菌作用を回避し、マクロファージのアポトーシスを誘導することが分かった。二次的に起きるマクロファージのネクローシスにより、細胞にとどまっていたスピロヘータが細胞外へ遊離され、標的臓器に移行すると考えられた。
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