サルモネラSTM1410はSPI-2遺伝子領域上にコードされるタンパク質である。STM1410はシグナル配列やconserved domainをもたず、また相同性のあるタンパク質が存在せず、機能が知られていない。本研究では、サルモネラSPI-2遺伝子領域にコードされる機能未知のタンパク質、STM1410のSPI-2III型分泌機構における機能的役割を解析する目的で、培養細胞を用いたin vitro感染実験によりstm1410変異株のSPI-2III型分泌装置依存的病原形質について明らかにし、さらにSTM1410のサルモネラ菌体内における存在形態の検討を行った。stm1410変異によるSPI-2III型分泌装置機能への影響を明らかにする目的で、SPI-2III型分泌装置の分泌タンパク質であるSseBの培養上清への分泌を観察した。その結果、stm1410変異株においてSseBの分泌はみられなかった。一方、stm1410変異株の感染細胞内におけるSPI-2エフェクターの分泌を調べるために、HeLa細胞ヘサルモネラを感染させ、SPI-2エフェクタータンパク質SseJの細胞への分泌・輸送を免疫蛍光抗体法により観察した。その結果、stm1410変異株ではSseJの分泌が全くみられなかった。したがって、STM1410はSPI-2III型分泌装置の機能発現に必須のビルレンス因子であることが強く示唆された。STM1410は、SPI-2III型分泌装置を形成するタンパク質の一部であることが予想されたため、次に菌体内における局在を検討した。サルモネラ菌体を破砕し、タンパク質の可溶性の差により分画した。その結果、STM1410は膜成分に存在するタンパク質であることが示された。膜成分をショ糖密度勾配遠心法によりさらに分画すると、STM1410は内膜に存在することが示唆された。
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