研究課題
1. 本年度は順天堂病院由来株7株、順天堂練馬病院由来株4株、順天堂静岡病院の皮膚科外来MRSA15株MSSA45株を対照として、PVL遺伝子の保有を調べたが、陽性株は検出されなかった。次年度は対象株の枠を広げて検討を続ける予定。しかし、これらの株の中には新規SCCmecを持つ株が多いことを見出し、現在塩基配列の決定を行っている。2. 順天堂医院患者の同意を得て成人血清(30検体)、小児血清(26検体)を分与いただき、酵素抗体法にてブドウ球菌に対する抗体価及びPVLに対する抗体価を酵素抗体法にて測定した(倫理委員会承認ずみ)。ブドウ球菌は免疫グロブリンを非特異的に吸着するプロテインAを欠落させたRN4220株を用いた。成人に比して、小児血清のブドウ球菌に対する抗体価は全体的に低かった。またPVLに対する抗体価の測定は現在まで成人血清3検体、小児血清5検体ともに低かった。本研究で想定したのは、他の白血球溶解酵素との交差反応性であり、交差反応すること、及び少数の小児では交差反応が低い場合が多い傾向が検討した範囲内で確認された。3. CA-MRSAの代表株の一つであるUSA400MW2株の培養上清を用いて、ヒト好中球に対する細胞障害活性をFlow cytometryの手法により解析した。培養上清は、PVL蛋白質の産生量が多いと報告されているCCY培地を用いて約19時間培養後、上清を回収し、回収した培養上清をmembrane filterによる過後、-80℃に保存した。使用時、培養上清をPBS(-)にて、10、50、100、250、500、1000倍希釈し、細胞と室温にて約0.5-2.0時間反応させ、Flow cytometryにて解析を行った。MW2培養上清は、ヒト好中球を破壊し、その作用は希釈倍率及び作用時間依存的であった。また、抗PVLモノクローナル抗体の存在下では、ヒト好中球の破壊が有意に抑制され、好中球破壊にPVLが関与していることが明らかになったが、高濃度の培養上清を用いた場合には、モノクローナル抗体存在下でも好中球溶解を完全には抑制できず、PVL以外の他のleukocidinが好中球溶解に関与している可能性が示唆された。
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http://www.staphylococcus.net/
http://www.SCCmec.org/