研究課題
本年度は順天堂病院由来61株を検討しPVL陽性株1株(JCSC9076)を検出した。JCSC9076はMLSTではST8に属し、type IVa SCCmecを保有する点でUSA300と同じ特徴を示したが、ACMEと呼ぶ遺伝因子を保持していないため、米国で蔓延しているUSA300株とは異なると判断した。PVL陽性株にはPVL遺伝子を持つファージが染色体上に溶原化しているが、ファージの種類の違いの検討及び染色体タイプやSCCmecタイプを決定する事により、分離株を特徴付けした。その結果、group3に属する新規PVLファージの存在を見いだし、全塩基配列を決定して報告した(Zhang2011)。またPVL陽性株は、諸外国のPVL陽性市中感染型MRSAの持ち込みと推定される株と、我が国特有と思われる株とに分類できた。USA300を代表とする諸外国からの持ち込みは現在のところ、わずかであると判断された。今回検出されたST8株と類似の株のアウトブレイクがある全寮制高校でおこるなど、この種の株が我が国で蔓延する可能性が示唆されたため、引き続きPVLファージ構造を始めとするその他の特徴を現在検討中である。PVL産生は1980年代の分離株に非常に多いものが存在した、近年の分離株に於けるPVL産生量は比較的すくなかった。Cell Sorterを用いた培養上清の作用を検討した所、ラッテックス凝集反応の測定値と良く一致したPMNに対する細胞毒性が示された。精製PVL及び培養上清ともに肺培養細胞に対する毒性は低かった。
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