研究概要 |
Streptococcus intermedius反復注射(週2回、8週間投与)により、再現性の良い原発性胆汁性肝硬変(PBC)のマウス実験モデルを作成することに成功した。病理組織では肝臓の小胆管周囲の非化膿性炎症所見を認め、ヒトPBCで認められたリポテイコ酸、S. intermedius histone-like protein(HLP)の胆管周囲への沈着が免疫組織染色で証明された。同部位からは菌自体は検出されず、死菌でも同じ病変が惹起されることから、PBC様病変の成立にはS. intermediusの感染は必ずしも必要でなかった。ヒトでPBCの進行に強く関与すると考えられている核膜タンパク質gp210に対する抗体がPBCモデルマウスでも高値を示しており、本モデルはヒトPBCに非常に近い病態を示すと考えられた。マウスHLP抗体はgp210と交差反応を示し、実際にHLPにはgp210のepitopeと考えられているARKOOOP motifを保持していることから、マウスPBCモデルで抗HLP抗体で染色されたものはgp210そのものである可能性があり、PBCの発症機序を説明する根拠になると考えられた。また、PBC患者5名、他の疾患のない歯周病患者19名などの歯周病部位のS. intermediusの分布を調べた。PBC患者では5名中4名(80%)からS. intermediusが分離されたのに対し、コントロール3/19(16%),自己免疫性膵炎0/4,シェーグレン0/2,その他4/11(36%)と陽性率が低かった。PSCは1例のみであったが、陽性であった。PBCでは歯周病病変にS. intermediusを保有している率が高く、これまでの我々の成績を裏付けるとともに、S. intermediusをコントロールすることでPBC発症やPBCの病期進行を防ぐことができるのではないかと期待された。
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