研究課題
本年度は、LECT2の血漿中の濃度が、ヒトにおける炎症性疾患の重症度と相関があり診断的価値があるかという点を東京女子医科大学ICUに入室した敗血症患者についてさらに詳細に解析した。患者数は、23名となり、うち4名については、ICI入室中に頻回採血し、LECT2血漿中濃度のtime courseを検討した。さらに、敗血症が感染による全身性の炎症という観点から、感染の重症度の指標である血漿中procalcitoninの変動についても、全症例について測定した。23名のデータをまとめ、投稿した。ICU入室時と退出時で有意差のあった各種炎症性パラメーターについて、matched pair testにより個人の変動を検討すると、昨年度の報告と同様に、LECT2の変動は、他のパラメーターの変動とは逆に、ICU入室時に低値を示し、全例が退室時に上昇した。好中球(%)、幼若白血球、CRP、IL-6、procalcitoninと同等の有意な変動を認めた。2つのパラメーターについて、ICU入室時と退出時それぞれの75%確率楕円を引くことによって、パラメーター間の相関を検討した。その結果、LECT2とCRPの組み合わせは、急性期と回復期を良く区別したが、LECT2とprocalcitoninの組み合わせは、前者の組み合わせと比較し、区別の程度が劣った。また、基礎疾患のLECT2濃度への影響に関して、肝疾患、癌の有無について比較検討したが影響は認めなかった。time courseを追った4名のLECT2とCRPの血漿濃度の変動は、mirror imageを描いた。ヒトの好中球および単球の貧色能に対するLECT2の効果は認めなかった。以上から、本研究によって、LECT2は、CRPと同等にヒトの炎症性疾患の重症度の指標になることが始めて示された。
すべて 2011
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ISRN Gastroenterol
巻: 513514
DOI:10.5402/2011/513514