これまで我々は、実験的エンドトキシンショックのモデルとして、ガラクトサミンとリポ多糖を用いた急性肝炎モデルを用いてきたが、ガラクトシルセラミドとリポ多糖を用いた実験的モデルでは、肺傷害が主病変で、より臨床的なエンドトキシンショックが誘導されることを示してきた。今回の実験ではガラクトサミンを用いた系でも、ガラクトシルセラミドを用いた系でも同様にリポ多糖によるNO(-酸化窒素)の誘導が致死反応として重要である可能性が示唆された。ガラクトシルセラミドとリポ多糖によって肺傷害が誘導された病変では、誘導型NO合成酵素とニトロチロシンが強く発現していた。両者が強く発現した部位は肺傷害(主にアポトーシス陽性で検出された)が誘導されたところと一致していた。このことは、肺傷害とNO発現が強く関与していることを示している。そこで誘導型NO合成酵素阻害剤を何種類か用いたところ、1400Wが特に強い致死抑制を示し、肺の傷害は有意に抑制された。これまで、我々が抗酸化剤として使ってきたケルセチン等はリポ多糖によるNOを強く抑制することを報告している。そこで、ケルセチンを誘導型NO合成酵素阻害剤と同様に用いたところ、誘導型NO合成酵素の発現が抑制されて、致死反応が有意に抑制された。一方、ガラクトサミンとリポ多糖による肝傷害でもNO発現が傷害と強く関与していることが示めされている。そこで、誘導型NO合成酵素阻害剤以外で、リポ多糖によるNO発現を抑えるものを検索したところ、TNF-alpha阻害剤として知られているサリドマイドがリポ多糖によるNO発現を抑え、肝傷害を有意に抑えることがわかった。また、セリンプロテアーゼの一つが強くリポ多糖によるNO発現を抑え、肝傷害を有意に抑えることも示した。この酵素阻害剤は好中球からのサイトカイン産生を抑制することが知られており、リポ多糖による好中球の刺激が肝傷害に関与している可能性が示された。また、この阻害剤はガラクトシルセラミドとリポ多糖による肺傷害にも効果が期待できる。
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