我々は、β毒素は、免疫細胞に作用させると、形態が大きく変化して膨れあがることを報告している。本毒素が作用するラフトにはG-アクチンなどの細胞骨格が存在し、細胞骨格の安定化に深く関与していることが知られている。本毒素が細胞形態を変化させることから、β毒素がこれら細胞骨格蛋白質(Fアクチンやチューブリン)にどのような変化を示すのかを、ローダミン-ファロイジンや抗チューブリン抗体で蛍光染色して解析したところ、毒素作用により少しのアクチンとチューブリンの少しの減少が認められた。次に、in vivoにおけるβ毒素の作用を解析するため、β毒素をマウスに投与して、脾臓、および、末梢血由来の免疫系細胞の変化をフローサイトメーターで測定すると、CD4陽性のTh細胞や、CD19陽性のB細胞が低下し、細胞毒性を示した。すなわち、本毒素は、in vivoでも免疫系に影響を与えることが判明した。そこで、本毒素による、血中サイトカイン量の変化を測定した。その結果、毒素投与後、約1時間後から、血中TNGα、IL-4、IL-10量の増加が認められ、3時間以上、増加していた。一方、IL-2、IL-5、IFNγの各サイトカインは、毒素投与でも変化はなかった。以上の結果から、β毒素は、免疫系細胞の形態は変化させるが、細胞骨格タンパクの変化ではないことが明らかとなった。さらに、in vivoにおいて本毒素は、特定の免疫系細胞に作用して、サイトカイン遊離を誘導し、これらの作用は本毒素の毒性に密接に関与することが明となった。
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