本年度の研究目的は、C型肝炎ウイルス感染とユビキチン非依存プロテアソーム活性との関連性を明らかにし、蛋白質分解機構を標的にした新規予防治療法開発の基盤確立を目指すことである。PA28γに依存してユビキチン非依存プロテアソームで分解される内在性基質はp21、p53やSRC-3などが知られているが、少なくともHCV感染に感受性である肝臓細胞では、PA28γのノックダウンによって変化は認められなかった。PA28γノックダヴンによって、HCVの培養上清中のウイルス量は1/10以下に減少し、その減少はPA28γの発現回復によって、ウイルス量も回復した。プロテアソーム活性化に関与するPA28γ内のアミノ酸残基に変異を入れたPA28γ変異体の強制発現によって、PA28γノックダウンによって減少したウイルス量は回復しないことから、プロテアソーム活性化能によってウイルス産生が維持されているものと思われた。PA28γに相互作用する分子を単離したところユビキチン化酵素E3が含まれており、宿主細胞内の遺伝子発現に寄与していることが示唆された。また、CC14刺激時、コア蛋白質の発現によって、マウス肝臓内でDNA修復能は低下し、細胞増殖能は維持されいた。一方、PA28γをノックアウトするとコア蛋白質発現非発現に関わらずマウス肝臓内で細胞増殖能とDNA修復能は低下したことから、PA28γの機能はHCVコア蛋白質による肝癌発症機構に関与することが示唆された。
|