研究概要 |
ヒト末梢血単核球(PBMC)を移植したヒト化マウス体内でヒトの抗HTLV-1免疫応答を効率よく誘導できる系を確立するため、本年度は以下の検討を行った。 1.HTLV-1感染細胞株MT-2と新鮮なHTLV-1非感染ヒトPBMCを1:1で混合し、計200万個の細胞を免疫不全マウス(RAG2/γCnull,NOG系統)の脾臓内に直接接種する方法を確立した。2.接種2週間後にマウスから末梢血と血漿、脾臓細胞を回収した後、各々からヒトCD4陽性、ヒトCD8陽性分画をMACS beadsを用いて分離精製し、ゲノムDNA、cDNAを抽出した。3.抽出したゲノムDNA、cDNAをtemplateにgenomic PCR, RT-PCRを行い、マウス体内でヒトPBMCにHTLV-1感染が成立しているかどうか検討した。4.さらに、末梢血単核球、脾臓細胞をin vitroで12時間培養し、フローサイトメトリーでTax蛋白の検出を試みた。その結果、末梢血単核球、脾臓細胞から分離したヒトCD4,CD8陽性細胞双方からHTLV-1プロウイルス、taxおよびHBZ mRNAが検出され、マウス体内でヒトPBMCに感染が成立することが明らかになった。感染細胞数はCD4陽性細胞の方が多かった。さらに、Real time PCR法でプロウイルス1コピーあたりのtaxおよびHBZ mRNAを比較したところ、HTLV-1感染者の末梢血単核球と同様に、in vivoではtax mRNA発現が抑制されている一方で、HBZ mRNAが高発現していることが明らかになった。また、末梢血単核球、脾臓細胞ともin vitroで12時間培養することで、HTLV-1感染者の末梢血単核球と同様にCD4陽性細胞優位にTax蛋白が検出可能であった。以上より、免疫不全マウス体内でヒトPBMCにHTLV-1が感染すること、感染細胞内のウイルス遺伝子・蛋白がHTLV-1感染者と同様の動態を示すことが明らかとなり、この系がマウス体内でヒトHTLV-1感染細胞動態を解析する上で有用であることが示唆された。
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