研究課題/領域番号 |
21590516
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
稗島 州雄 近畿大学, 医学部, 准教授 (10322570)
|
研究分担者 |
義江 修 近畿大学, 医学部, 教授 (10166910)
重田 暁子 近畿大学, 医学部, 研究員 (50420435)
|
キーワード | Tax / eEF1A2 / HTLV-1 / T細胞 / がん化 |
研究概要 |
タンパク翻訳伸長因子eEF1Aには神経と筋肉以外のほぼ全ての組織で発現しているeEF1A1と主に神経と筋肉で発現している亜型のeEF1A2が存在する。我々はHTLV-1転写制御因子TaxがHTLV-1感染細胞株においてeEF1A1ではなくeEF1A2を特異的に発現誘導することを見出した。eEF1A2のタンパク質レベルでの発現は本年度中に作製した抗ヒトeEF1A2ウサギポリクローナル抗体によって確認した。eEF1A2の役割を解明するためにヒトeEF1A2発現ベクターを構築し、HTLV-1非感染T細胞株に遺伝子導入したところ、有意な細胞増殖促進効果が認められた。逆に、HTLV-1感染細胞株にeEF1A2特異的siRNAを遺伝子導入したところeEF1A2の発現低下とともに有意な増殖抑制効果を認めた。HTLV-1非感染T細胞株にeEF1A2を導入すると各種アポトーシス誘導剤に対して抗アポトーシス活性の増強が観察されたことから、この活性が細胞増殖促進効果の一部を担っている可能性が示唆された。我々はさらにeEF1A2の役割を検討するため、Tax発現HTLV-1感染細胞株に前述のeEF1A2特異的siRNAを導入し、変動する遺伝子群をRNAマイクロアレイ法を用いて網羅的に解析した。その結果、現時点ではeEF1A2の発現低下に伴って発現低下する腫瘍関連遺伝子あるいは逆に発現上昇する腫瘍抑制遺伝子を同定するには至っておらず、さらなる解析が必要と考えられた。これは、eEF1A2が、転写因子のように直接遺伝子を活性化するのではなく、シグナル調節因子としてタンパク質レベルでの修飾あるいは調節作用が主な作用であるためでないかと推測された。平成22年度はeEF1A2による増殖シグナル活性化経路の同定を中心に解析を進めていきたいと考えている。
|