研究課題
成人T細胞性白血病(ATL)の新規治療法を開発する目的で我々が開発したATLの病態を反映したモデルマウスを用いて研究を行った。本モデルマウスで発症するT細胞性白血病はヒトでのATLと同様に多くの臓器への浸潤性を示す。我々は今まで本マウスで発症したT細胞性白血病細胞がケモカインであるSDF-1αに対して走化を示す事を示してきた。そこでSDF-1αのレセプターであるCXCR4のアンタゴニスト(AMD3100)を用いてマウス白血病細胞への影響を調べたところSDF-1αによるERK1/2のリン酸化及び細胞の走化が抑制される事が明らかとなった。これらの事からAMD3100がATLの新規治療薬として利用できる可能性が出てきた。そこでAMD3100のin vivoにおける腫瘍抑制効果をSCIDマウスにマウス白血病細胞を腹腔内接種し調べた。結果,5×10^3個の腫瘍細胞を接種した群でRD3100投与により肝臓、肺での腫瘍細胞の浸潤が有意に抑制された。本研究によりAMD3100はin vitroにおいてヒトATL細胞及びマウス白血病細胞の走化性を抑制するだけでなくin vivoにおいても腫瘍細胞の組織浸潤を抑制する事が明らかとなった。AMD3100は白血病発症の早期の段階でのSDF-1αによる腫瘍細胞の誘引を抑制する事が示唆され新規治療法に応用できる可能性が認められたが治療には腫瘍細胞の浸潤抑制と同時に増殖を抑制する必要があり、今後は増殖抑制能を持つ薬剤との併用時の効果の検討が必要である。
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Blood 114(13)
ページ: 2709-2720
Blood 114(14)
ページ: 2961-2968