ヘルペスウイルスの転写制御はまず、主として宿主の転写因子によって活性化される前初期遺伝子が活性化される。そして、その前初期遺伝子がウイルスのDNA複製に必要な初期遺伝子を活性化し、DNA複製が開始される。そして、DNA複製に依存してウイルスの構造蛋白の産生に必要な後期遺伝子が活性化される。ヘルペスウイルスの転写はこうした厳密なカスケードによって制御されている。しかし、どうして前初期遺伝子は初期遺伝子のみを活性化し、後期遺伝子は前初期遺伝子のみでは活性化されないのか、ヘルペスウイルスの後期遺伝子の転写活性化がウイルスDNAの複製依存的に起こるのか、その分子機構は全く不明である。そこで、本研究は組換えヒトサイトメガロウイルス(HCMV)を用いてその分子機構を明らかにし、ヘルペスウイルスの遺伝子カスケードの制御機構の一端を明らかにすることを目的とした。そこで、本年度はヒトサイトメガロウイルス(HCMV)UL79遺伝子はウイルス増殖に必須で、UL79欠損ウイルスを用いた解析からUL79遺伝子は後期遺伝子プロモーターを特異的に活性化する後期遺伝子特異的な転写活性化因子であることを明らかにした。
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