研究概要 |
ヘルペスウイルスは細胞に感染すると、主として宿主の転写因子によってウイルスの前初期遺伝子が活性化される。そして、その前初期遺伝子がウイルス遺伝子の転写活性化因子としてウイルスのDNA複製に必要な初期遺伝子を活性化し、DNA複製が開始される。そして、DNA複製に依存してウイルスの構造蛋白の産生に必要な後期遺伝子が活性化される。ヘルペスウイルスのDNA複製と遺伝子の転写は厳密に共役しながら、ウイルスの増殖のために最適化されている。そして、これらの厳密にコーディネートされたウイルスのDNA複製と転写はいわゆる"Replication Compartments(RCs)"と呼ばれる核内の特定の場所で行われる。ヘルペスウイルスのDNA複製はローリングサークル型であり、RCsの場の形成はウイルスの爆発的な増加に必須であると考えられる。しかし、RCsを介してウイルスDNAの複製と後期遺伝子の転写の共役がどのように制御されているのか、その分子機構は不明である。 今回私達はHCMVがコードするUL79,87及び95がウイルスDNAの複製には影響を及ぼさないにもかかわらず、ウイルスの後期遺伝子発現に必須な転写活性化因子であることを明らかにしてきた。さらにウイルス感染後、これらのウイルスがコードする後期遺伝子の転写に特異的な転写活性化因子がpre-RCs、及びRCsにリクルートされ、ウイルスDNAポリメラーゼ付随因子であるUL44と共局在することを示した(Iomuraet.al.,J.Virol,2011)。
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