細菌やウイルスの核酸成分RNAとDNAを認識し反応するTLR7とTLR9は、私達の生体内に存在するRNA成分とDNA成分を認識して反応する危険な存在でもある。そのTLR7とTLR9をどのように制御しているのかを追及することが、この基盤研究の目的である。TLR7とTLR9の反応性になくてはならないのがUNC93b1と呼ばれる分子である。この分子は粗面小胞体に存在し、TLR7とTLR9に会合する。UNC93b1によってTLR7とTLR9は粗面小胞体から反応の場であるエンドソーム・ライソソームへ移行することができる。我々はUNC93b1のN末端側のPDZドメインが、TLR7とTLR9の反応性のバランスを取っていることを発見した。実際にVIVOにおいての重要性を明らかにするためにPDZドメインの1アミノ酸を置換するノックインマウスを作製し解析したところ。予想していた通りに樹状細胞、マクロファージ、B細胞においてTLR7の反応性は著しく増強し、TLR9の反応性は著しく減少した。ノックインマウスはメンデルの法則通りに生まれるが、1年以内に75%のマウスが死亡した。マウスの脾臓は著しく肥大しており、その中で顕著に増えた細胞はCD11b+のMyeloid細胞とTer119+CD71+erythroblastであった。そしてさらに、肝臓に塞栓が起こることで、肝障害でマウスは死に至ることが明らかとなった。このノックインマウスはTLR7のノックアウトマウスと交配することで病態が消失することから、TLR7の反応性の増強がその病態と関わっていることが示唆された。さらにB細胞の欠損マウスと交配することでも病態が消失することから、B細胞が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。B細胞が消失したノックインマウスでは、TLR7の発現が認められないT細胞の活性化も著しく減少して正常な状態に戻っていることから、B細胞の活性化の下流にT細胞の異常な活性化があることが予想された。我々はさらにUNC93b1に会合してTLR7とTLR9の反応性を制御するsmall G proteinを同定した。そしてそのノックアウトマウスの解析から我々の同定したsmall G proteinは、SLE(全身性エリトマトーデス)のモデルマウスの病態発症に関係するType1インターフェロン産生に関与している可能性が出てきている。
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