抗原提示細胞におけるMuramyl dipeptide(MDP)によるNOD2の活性化はTol1-like receptor(TLR)を介するNF-kappaBの活性化を抑制し、腸炎の発症を防止していることを代表者は見出しているが、NOD2の活性化がTLRを介するI型IFNの産生に及ぼす効果は不明であった。代表者らはMDPによるNOD2の活性化がTLR9を介するI型IFNの産生を負に制御することを発見した。その機序の詳細は不明であるが、NOD2はTLR経路をNF-kappaBとI型IFNの活性化という2つの側面から負に制御することにより、腸管免疫の恒常性を維持していることが明らかとなった。また、MDPの全身投与によるNOD2の活性化はTLR9 ligandの投与による腸炎の悪化を防止した。その効果はNOD2の活性化がTLR9を介するI型IFNの産生とTH 1ケモカインの産生を抑制するためであった。NOD2の姉妹分子であるNOD 1の消化管上皮細胞における活性化はI型IFNの経路を活性化し、TH1ケモカインの産生を誘導することにより、炎症反応を惹起し、Helicobacter pyloriの慢性胃粘膜感染に対し、防御的に働いていることも明らかにした。以上の結果からNOD1とNOD2は腸内細菌由来抗原により活性化された際にI型IFN経路の誘導という観点からは全く正反対の効果を示し、NOD2の活性化はI型IFN経路の活性化を抑制する一方でNOD1の活性化はI型IFNの産生を誘導することが明らかになった。
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