抗原提示細胞におけるMuramyl dipeptide(MDP)によるNOD2の活性化はToll-like receptor(TLR)を介するNF-kappaBの活性化を抑制し、腸炎の発症を防止していることを代表者は見出している。しかしながら、NOD2の活性化がTLRを介するI型IFNの産生に及ぼす効果は不明であった。最近、代表者らはMDPによるNOD2の活性化がTLR9を介するI型IFNの産生を負に制御することを見出しているが、その機序の詳細は不明であった。平成22年度に行った研究により、我々はMDPによるNOD2の活性化は形質細胞様樹状細胞(pDC)におけるTLR9を介するIFN-alphaの産生をIRF7の核内移行を制御することにより抑制することを確認した。さらに、MDPの全身投与によるNOD2の活性化はCpG(TLR9 ligand)投与によって、誘導されるマウス実験腸炎の発症を抑制した。NOD2欠損マウスを用いた骨髄移植実験により、抗原提示細胞(pDC)に発現するNOD2の発現が腸炎の抑制には必須であった。さらに、その腸炎抑制効果の分子機序はIFN-alphaとその下流のTh1反応の抑制に依存することが明らかになった。以上の結果から、NOD2はTLR経路をNF-kappaBとI型IFNの活性化という2つの側面から負に制御することにより、腸管免疫の恒常性を維持していることが明らかとなった。今後はNOD2がTLR9-IFN-alphaの経路のどのレベルにおけるシグナル伝達経路に作動しているのか?ユビキチン化経路に焦点をあて、解明する。
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