生物の個体維持に不可欠な仕組みとして、獲得免疫による生体防御がある。この獲得免疫応答の過剰な反応を抑制するため、免疫応答を優性的に抑制する細胞群として、制御性T細胞が同定された。制御性T細胞は、免疫応答を負に制御できることから、自己免疫病、アレルギー等の治療に応用可能である。さらに制御性T細胞の増殖、制御能を強化すれば、移植臓器に対する免疫寛容を誘導できる。また逆に正常個体から制御性T細胞を除去すると悪性腫瘍に対する有効な免疫応答を惹起、あるいは強化できることから、制御性T細胞の量的、機能的操作は、抗腫瘍効果を高めうる可能性がある。しかし、制御性T細胞を効果的にコントロールしうる方法、薬剤はいまだ実用化されておらず、臨床応用が待たれている。そこで本研究では、制御性T細胞の成立に必須な転写因子Foxp3に注目し、Foxp3転写コンプレックスの同定、解析を試み、その制御機構、および制御性T細胞の機能発現、分化誘導、制御性T細胞特異的遺伝子発現にどのように関わっているのかを明らかにすることを目的とした。現在までに同定したFoxp3転写complex中、制御性T細胞の機能に関わる可能性のある因子としてSATB1とBcl11bを同定した。培養細胞における過剰発現系では、SATB1およびBcl11bはFoxp3と結合することが示された。この結果は、これらの転写因子がFoxp3依存的転写活性に影響を与えている可能性を示唆する。また制御性T細胞で特異的にBcl-11bを欠損するマウスを解析した結果、このマウスは自己免疫疾患を発症していることが明らかとなった。現在詳細を解析中である。
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