本研究は、生体防御機構あるいは免疫系の特徴の一つであり、最も重要な役割の一つである免疫学的記憶現象(免疫学的メモリー)の分子基盤についてNotchシグナルに着目して解明することを目的とする。免疫学曲メモリーの本態は抗原特異的メモリー細胞(TおよびBリンパ球)が長期に渡り生体内に留まることである。本研究ではCD4陽性Tリンパ球メモリーに特に焦点を当て、メモリー細胞の分化あるいはその長期維持機構について感染症モデルなどを用いて解析することを計画している。 本年度は昨年度の成果をさらに詳細かつ発展的に検討した.昨年度、Leishmania major原虫を連続して感染させるとTリンパ球特異的Notchシグナル欠損マウス(RFF4)は再感染時にも初感染と同様の反応が認められたことから、RFF4マウスでは原虫特異的メモリーCD4陽性Tリンパ球が長期間生存できないのではないかと考えた。本実験結果をより確実に確認するため、RFF4マウスをBALB/c背景へと交配しLeishmania major感染実験を行った。Leishmania major感染に対しBALB/c系統マウスはTh2優位となり感受性となる一方、感染時に抗IL-4抗体を投与するとTh1優位となり感染抵抗性となることが既に明らかである。そこで、RFF4-BALBマウスにLeishmania major感染と同時に抗IL-4抗体を投与したところ野生型BALB/cマウスの場合と同様に抵抗性を獲得した。初感染収束1ヶ月後に、このマウスに対し同原虫を再感染させた。すると野生型ではTh1型メモリらT細胞が存続しているために抵抗性を示した。しかし、初感染では抵抗性であったRFF4-BALBマウスは再感染では感受性となり原虫を排除できなかった。このことからもNotchシグナルはメモリーT細胞の生体内での維持に必須であることが明らかとなった。
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