本研究は、刺激型抗TLR抗体を用いて、その(1)サイトカイン産生・補助刺激分子発現誘導機序、(2)in vivoアジュバント様効果、(3)非特異的感染防御効果とその作用機序を解明し、刺激型抗TLR抗体によるヒトの感染防御と予防法の確立に向けた研究基盤を樹立することを目的とするものである。 昨年度に引き続き、TLR4分子刺激抗体を用いて、そのin vivo投与による抗体産生制御に関する研究をおこなった。これまでに、免疫前にこの刺激型抗体を単独投与すると、抗体産生が抑制されることを確認しているが、その機序の解明をin vitroの細胞実験により解析した。まず、刺激抗体を投与したマウスの脾臓細胞のMHCクラスII分子および補助刺激分子であるCD40、CD86の発現は非投与の脾臓細胞に比較して発現低下が認められた。次に、刺激型抗体を投与した脾臓細胞の抗原提示能力を、抗原特異T細胞株を用いて測定したが、前投与、非投与のどちらのマウスの脾臓細胞も抗原提示能力に差異は無かった。また、抗体産生を指標にしたヘルパー効果にも差は認められなかった。つまり、この刺激抗体によるTLR4活性化によって、T細胞への抗原提示及びT細胞ヘルパー効果には影響が無いことが分かった。次に、B細胞に対する影響を、投与、非投与マウスから得た細胞とヘルパー効果を有する抗原特異T細胞かぶとを共培養した。同じ強力なヘルパーT細胞により、非投与の脾臓細胞は抗体産生が誘導されたが、刺激抗体投与脾臓細胞からは抗体産生は認められなかった。すなわち、抗体投与によるinvivoでの抗体産生抑制は、B細胞の抗原に対する応答機能が抑制されたためであることが分かった。この結果は、B細胞の抗体産生応答における新しい制御機序が存在することを解明したもので、非常に意義あるものと考えられる。
|