研究課題
T細胞の活性化・機能発現には抗原特異的なシグナルに加えて、補助シグナル分子を介するシグナルが非常に重要であり、その中でも、CD28ファミリー分子は初期の活性化やサイトカイン産生、エフェクター細胞の機能発現において最も重要である。そこでCD28ファミリー分子を介するシグナル伝達経路の解析と生体内でのT細胞の反応におけるCD28ファミリー分子の役割を同時に解析する方法として、CD28及びICOSの細胞内領域に変異を持つ変異補助シグナル分子を発現するトランスジェニックマウス(Tg)を作製した。CD28及びICOSは細胞内領域に酵素活性を持っておらず、細胞内領域に様々な分子をリクルートすることによりシグナルを伝達することが明らかとなっている。CD28細胞内領域の各種変異TgマウスのT細胞を抗CD28抗体で刺激したところ、YMNMモチーフのYをFに置換した場合、CD28のチロシンリン酸化がほとんど見られなくなり、ERKやAktのリン酸化誘導が減弱した。この結果からCD28細胞内領域にはチロシン残基は4つ存在しているが、YMNMモチーフのYがチロシンのリン酸化に必須であることが明らかとなった。また、このYF変異CD28を発現するT細胞は、抗TCR抗体と抗CD28抗体で刺激した際の増殖やIL-2産生が野生型CD28を発現するT細胞と比較し減弱することが明らかとなった。一方、Lckが結合しCD28のチロシンリン酸化に重要であるとされていたC末側のPxxPモチーフに変異を導入した場合、チロシンのリン酸化には変化が見られなかったものの、T細胞の増殖やIL-2産生は減弱した。従って、CD28の補助シグナルにはCD28のチロシンリン酸化に依存する経路とそうでない経路があることが示唆され、それぞれ、YMNMモチーフとC末側PxxPモチーフが重要な役割を果たしていることが示唆された。
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