DNaseγ遺伝子欠損マウスにアセトアミノフェンを投与し、薬剤性肝障害を誘導すると、DNaseγ遺伝子欠損マウスでは野生型マウスに比べ広範囲のネクローシスが誘導された。この理由として、DNaseγ遺伝子欠損マウスではネクローシス細胞由来のDAMPsによる自然免疫活性化が抑制されているのではないかと考えた。DNaseγ遺伝子欠損マウスの壊死細胞からは細胞質中のALTなどの酵素は自由に漏出するが、核は比較的無傷で、核内物質の漏出が抑制されていた。したがってDAMPsは核内物質で、DNaseγが染色体DNAを断片化し、核を崩壊させ、核内のDAMPsの放出を誘導するものと予想した。この条件に合致するDAMPsの第一候補として遊離ヌクレオソームが考えられた。しかしながら、これまでのところ遊離ヌクレオソーム単独で樹状細胞やマクロファージなどを十分に活性化することはできていない。したがって、薬剤性肝障害の誘導をDAMPsによる自然免疫活性化の抑制で説明することはやや無理があるように感じられた。一方、アセトアミノフェン投与後の肝臓では酸化ストレスが増すことは知られていたがDNaseγ遺伝子欠損マウスでは野生型マウスに比べ酸化ストレスがより強く起こっていることが明らかになった。そこでDAMPsとしてのヌクレオソームの機能として、酸化ストレスの中和による自然免疫活性化があるのではないかと予想した。
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