1.血清レクチンによる核酸の認識とその意義の解明 本研究は、血清マンナン結合タンパク質(MBP)が、細菌由来ゲノムDNA、プラスミドDNA、合成オリゴヌクレオチドDNA(RNA)、アポトーシス細胞由来の断片化DNAにカルシウム依存的に結合することを明らかにした。次に、分子間相互作用解析より、MBPは二本鎖DNA、一本鎖RNA、一本鎖DNAの順に高い親和性を示すことが明らかとなった。また、MBPとDNAの複合体はレクチン経路による補体系の活性化を引き起こさず、DNAをコートしたビーズはファゴサイトーシスの促進を受けないことから、補体成分の沈着がファゴサイトーシスには重要であることが示された。さらに、MBPはアポトーシス細胞表面に露出したDNAを認識することから、この機構が生細胞とアポトーシス細胞の識別に寄与している可能性が考えられた。以上の結果はDNAのクリアランス機構および生体防御におけるMBPの機能を考える上で重要な知見となるものである。 2.レクチンJacalinによるBリンパ球のアポトーシスの誘導とその分子機構の解明 以前我々は、レクチンJacalinがT細胞表面のCD45分子に結合し、TCRシグナル経路を介してT細胞を活性化することを明らかにした。一方CD45は、B細胞をはじめとする他の免疫細胞上にも高発現し、細胞内シグナル伝達に重要なLynやSykといったSrcキナーゼの活性を調節することが知られている。そこで我々は次にB細胞上のCD45に着目し、CD45が主要なJacalinレセプターであることを明らかにした。また、JacalinはCD45との結合を介してCD45のチロシンホスファターゼ活性を阻害し、B細胞をアポトーシスへと誘導することを明らかにした。さらにアポトーシスにはCD45の活性阻害によるLynの活性化、細胞内カルシウム濃度の上昇に伴うカルパインの活性化が関与することが示唆された。
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