研究概要 |
記憶B細胞は有害な外来抗原の排除、さらにワクチンによる感染防御の樹立に重要であることが知られているが、その末梢組織での局在やその活性化の機序は不明である。記憶B細胞の末梢リンパ器官での局在を明らかにするため、記憶B細胞マーカーとして知られるCD38を発現し、IgG1へと免疫グロブリン遺伝子がクラススイッチを起こした細胞を(4-hydroxy-3-nitrophenyl)acetyl coupled-chicken gamma globulin(NP-CGG)免疫したマウス脾臓中で検索した。複数個所で見出されたCD38IgG1共陽性細胞の中で、NP反応性のB細胞は濾胞内の胚中心と近接する領域に細胞塊を形成し存在することが明らかとなった。このことは、抗原刺激された細胞のみが蛍光標識される遺伝子改変マウスであるAID-cre遺伝子トランスジェニックRFP-ROSAノックインマウスを用いた実験でも確認された。胚中心近傍に位置する記憶B細胞が抗原による再刺激によりどの領域で活性化されるかを明らかにするため、細胞分裂周期の状態を可視化することができる蛍光プローブ(Fuuci)遺伝子導入マウスをNP-CGGで免疫後、同じ抗原を再投与し,活性化に伴う記憶B細胞の細胞増殖が開始する領域を同定することを試みた。その結果、記憶B細胞は、濾胞内の胚中心近傍で再活性化を受けることが明らかとなった。記憶B細胞が局在し再活性化を受ける胚中心近傍には、記憶B細胞の活性化に必要なT細胞が数多く存在することが明らかとなり、記憶B細胞が上記の場所に存在することがT細胞との相互作用を容易かつ迅速にし、記憶免疫応答の迅速性に寄与している可能性が示唆された。
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