記憶B細胞は有害な外来抗原の効率的な排除、さらにワクチンによる感染防御の人為的な付加を行うに当たって重要であることが知られているが、その局在や活性化の様式、機序については不明な点が多い。我々はこれまで、(4-hydroxy-3-nitrophenyl)acetyl coupled-chicken gamma globulin(NP-CGG)を抗原としてマウスに免疫した場合、IgG陽性のものと、IgM陽性の記憶B細胞が生成しその局在に違いがあることを明らかにした。さらにこのIgM陽性記憶B細胞はさらにIgD陽性と陰性の細胞群に分離され、IgMIgD陽性記憶B細胞では高親和性抗体の選択が起きているのに対して、IgM陽性IgD陰性の記憶B細胞には選択が起きていないことが明らかとなった。これら2種類の記憶B細胞の生成過程に違いがあるかを、特に高親和性抗体産生細胞の選択が起こる場所であると考えられている胚中心分化過程を経ているかを調べたところ、IgD陽性のものは胚中心B細胞分化の過程を経て生成されたものが大多数であるのに対して、IgD陰性のものは胚中心B細胞分化の過程を経ずにも生成し得ることが明らかとなった。またこれらの細胞の分化能を解析したところ、IgD陽性の記憶B細胞は胚中心B細胞と抗体産生細胞どちらへの分化能を保持しているのに対して、IgD陰性の記憶B細胞は主に抗体産生細胞へと分化することが明らかとなった。上記の結果は、記憶B細胞には分化過程、末梢リンパ組織内での局在、さらに二次免疫応答後の分化機能に違いのある複数の細胞群が存在し、これらの機能面での統合により、記憶B細胞免疫応答が構成されていることが示唆された。
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