研究概要 |
免疫系を効率的に活性化し,抗原特異的な記憶をいかに持続させるかというテーマは、感染症、癌などに対する生体防御法を開発するうえで重要課題である。これまで記憶T細胞の研究は感染症の分野で精力的に進められてきてきたが、腫瘍免疫における細胞関連抗原に対する研究は、抗原量が低いなどの問題から、殆ど解明されてない。我々の開発した「NKTリガンドを提示させた腫瘍細胞」による免疫誘導の系は、長期に渡り腫瘍を排除できることを確認しており、本研究ではその記憶免疫を解明することを目的とした。 これまでの研究では、自然免疫を契機に誘導される獲得免疫から記憶免疫について、gp100クラス」抗原に特異的に反応するTCRトランスジェニックマウス由来のgp100特異的T細胞(Pmel)を用い、NKTリガンドを提示させたB16メラノーマワクチンで免疫後のT細胞免疫動態を解析してきた。「NKTリガンドを提示させた腫瘍細胞」を用いたシステムは、抗原にCFAやIFAを用いた方法に比べて遥かに強い免疫応答が長期に続く。この細胞アジュバントで誘導される一次免疫とセントラルメモリー(T_<CM>)とエフェクターメモリー(T_E)両者の記憶T細胞の相関について、記憶T細胞のクローンサイズをフローサイトメトリー(FACS)を用いて解析したところ、記憶T細胞サブセット(T_<EM>とT_<CM>)のクローンサイズに関して経時的に比率が変化し、最終的にTCMが優位となる推移を辿ることが判明した。このような免疫応答の機序としては宿主の樹状細胞の存在に依存している。記憶免疫であることを検証するために、(i)抗原再刺激による二次応答の評価で、抗原刺激によりT細胞の増幅が起こること、(ii)次にT細胞機能の評価として、T細胞の活性化のエフェクター期を経た後に、抗原刺激に対してIL-2,TNF-alpha,IFN-gammaのサイトカイン産生能が持続し、多機能を有することを検証することが出来た。以上のことは、成熟した記憶T細胞が誘導されていることを示す。
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