研究概要 |
【背景・目的】超高齢社会の到来で医療・介護制度への信頼が揺らいでおり、鍼灸按摩療法(三療)など有用な伝統療法を含めた医療提供体制の再構築が求められている。しかし、鍼灸の年間受療率(6%)、三療の市場規模(3,250億円)を見る限り、三療は地域医療資源としての機能を十分発揮しているとは言い難い。三療の社会化を政策論議の俎上に乗せるには、国民の受療行動やニーズ等の市場分析が必須であるが、これらの基礎資料は皆無に等しい。そこで、これら未知の分野の実態把握を目的に本調査を行った。 【方法】全国20歳以上の男女2,000人を対象にした面接調査を平成21年12月に実施した。対象者の抽出は、層化副次(二段)無作為抽出法により、全国を12ブロックに分類した上で157市区町村を選定し、住民基本台帳を使用して行った。有効回答者は1,362人(634人、女728人)、回答率は68.1%だった。 【結果】 1.1,362人のうち、直近1ヵ月に三療を受けた人(受療継続者)は、鍼灸2.2%、按摩5.3%だった。また、直近1年間の受療継続率(同7.3%、15.5%)を加えると、年間総受療率は鍼灸9.5%、按摩20.8%だった。 2.受療動機は、「知人・家族の勧め」23.1%、「知人・家族の治癒経験」21.3%、「病院・診療所の効果不十分」20.0%の順だった。 3.受療場所は「三療治療院」39.8%、「接骨院」36.1%、「病院・診療所」16.9%だったが、「整体院」「サウナ」「リフレクソロジー」「エステサロン」など無届医業類似業者の施設も18%を占めた。 4.料金の支払いは「公的医療保険」が過半(51.8%)を占めた一方で、「自費払い」は39.8%だった。 5.鍼灸・按摩を受療しない理由では、両者とも、「健康」が4分の3、「料金が高そう」が各16.4%、16.7%だった。 6.今後の三療の受療意向は、「有り」が全体の42.6%、「なし」が44.1%だった。 7.健康保険証の提示だけで医療保険を使える仕組みに改めることについて、「そう思う」が鍼灸76.4%、按摩74.2%で、三療の公的医療化を求める意識の高さが示唆された。
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