背景:小児蘇生教育は卒前卒後を問わず、その症例数の絶対的不足や倫理的問題から、緊急事態の実地経験を重ねることが困難であり、Off the job trainingが必要である。また今回、金沢大学病院と米国フィラデルフィア小児病院を通信回線で結び、遠隔にいる指導者が高機能シミュレータを制御し、参加者を訓練するというシステムを開発し、実際に運用した。 目的:卒前教育におけるシミュレーション教育の効果を検証すること、会わせて遠隔操作による教育効果の検証と問題点を抽出すること。 方法:医学部学生を対象にシミュレーション教育を行い、直後にアンケート調査を行った。 結果:平成22年度に引き続き23年度は、医学部5年学生16グループ計100名に対してシミュレーション教育を実施できた。各グループがシミュレーションセッションを終えた直後にアンケートを記入し、満足度と症例に対する自信を7段階評価で記入した。満足度は非常に高かった。自由記載では継続的学習を望む声が多かった。また11グループはフィラデルフィア小児病院から通信回線と通して遠隔操作し、ビデオを介して教育を行ったが、その満足度、症例を管理する自信、シミュレーションの現実感と有効性については実地での指導セッションと同等であった。 考察および結論:高規格マネキンを用いたシミュレーション教育は医学部卒前教育において参加者の満足度は高かった。また遠隔操作による遠隔教育は、容易にシステムの構築、運用が可能であること、そしてそれは実地の指導と同等の高い満足度が得られたことが初めて実証され、指導者育成にも効果があると考えられた。
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