2004年度に制定された「新医師臨床研修制度」により、基本診療科を網羅するスーパーローテーション方式の研修が必修化された。これにより、初期研修医は2~3ヶ月ごとの診療科巡業の義務を化去られる事となった。学生から社会人への生活の変貌や、医師として未熟な診療知識および診療技術、患者からの期待と責任感等に加え、志望診療科以外での研修による精神的・身体的負担、更には2~3ヶ月ごとに診療科を異動し、それぞれのシステムや人間関係に慣れなければ仕事にならないといった精神的負担等が重なり、研修医の38.7%が少なからずうつ傾向に陥る事が知られている。本研究では初期研修医のうち、うつ関連症状を呈し欠勤に至る人物の傾向を分析し、今後の発見・早期対応に役立つ情報を与える事、そして「心の問題」を生じるリスクが高いと考えられる研修医を入職時の性格との関連性を分析し、効果の高いスクリーニング手法を構築する。 昨年度は、新医師臨床研修制度により、京都大学医学部生および初期臨床研修医がどのような影響を受けたかについて、5年間分のデータをとりまとめ、論文として発表した。新医師臨床研修制度の施行後である平成16~21年度に京都大学医学部附属病院にて行われた初期臨床研修を修了した医師を対象に、各医師の過去研修診療科ローテート表を添付した上で職業性ストレス簡易調査票を基にしたアンケートを行い、回収率は30.7%であった。職業性ストレス簡易調査票によるストレス分析や、ストレスを感じた時期との相関についても解析を行い、一定の結果を得たことをとりまとめ、現在海外論文に投稿準備中である。また、さらに発展させた形で、今後新規科研費により研修医ならびに新人看護師の心の問題の経済的損失の分析を行う予定である。
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