本研究は、医学部卒業時OSCEで測定する臨床能力、測定方法、成績集計と判定方法、評価の信頼性の面から解析し、望ましいOSCEの計画と適切な成績判定方法を提案するものであり、初年度の21年度は1)ブループリント作成のための基礎データの集約、2)ブループリントに基づくOSCE設計の検討、3)パイロットとしての新しい医学部卒業時OSCEの実施を行った。 1) 医学教育モデルコアカリキュラム、卒後臨床研修到達目標、厚生労働省の「前川試案」、鹿児島大学必修臨床実習で許容される医行為をもとに、技能、頻度の高い症候、重要な疾患を整理した。2)一般的ブループリント作成法を基にUSMLE step 2 CSのブループリント作成の実際と課題開発方法を応用して、患者の年齢・性別、Clinical manifestation、臓器別疾患群、診断に必要とされる臨床技能をブループリント作成項目として提案することとした。各大学で実施するOSCEのステーション数を増加させることには限界があるため、全国規模のOSCEの提案と各大学で実施するOSCEには異なるブループリントが必要である。さらに、各項目に含まれるリストには、模擬患者とシミュレータを用いたOSCEとしての実現可能性を加味し、ブループリントでの比率を検討することとした。後に算出されるステーション数を用いてブループリントを完成させ、ブループリント項目を明示した課題(case)の作成を提案する。3)平成21年7月に6年生を対象としたパイロットOSCEを実施した。模擬患者の診療と診療録記載6課題を作成し、20分の診療では1焦点を当てた病歴聴取 2シミュレータの診察 3検査の選択 4診断と治療方針の患者への説明 5患者の質問への回答 6全体評価について70項目の評価を行った。診療後15分間で記載した診療録も評価した。模擬患者はコミュニケーションを21項目で評価した。評価結果の解析により、6領域の評価が可能であり、さらに課題毎にみられた得点傾向の差異から症例特異性を考慮した計画の必要性が明らかになった。
|